お盆の長期休みを使って一気に読みました。篠田桃紅さんのニューヨーク在住時代。かなり興味深い内容でした。1956年の渡米ということで、半世紀以上前に書家として筆と墨でアメリカで美術の仕事をしていたという。その実績だけで驚嘆です。
印象に残った言葉は―一歩手前で終わって無限を見る―というもの。なんでもかんでも100%完璧に終わらせればいいというものではない、ということ。これは書家として長い年月書き続けた篠田さんの境地ではないでしょうか。延延と続く自然へのリスペクトを感じます。
どんどん人間の感性が薄れていく現在ですが、墨の濃い薄いに広がる宇宙を思うと、僕の人生の暇な独身暮らしも、そう悪くはないと思えてくるのです。